第2回 コーヒー豆の精選方法(補足資料)

精選とは?

収穫されたコーヒーチェリーから生豆を取り出すことです。

精選方法には大きく分けて、ナチュラル式とウォッシュド式があります。

ナチュラル式

主にブラジル・エチオピアなどで行なわれている方法。非水洗式、NATURAL(ナチュラル)と呼ばれています。

 

ナチュラル式の流れ

収穫したチェリーを、そのまま、まるごと乾燥させ、果肉とパーチメントを一度に脱殻する方法です。高湿度または降雨が多い地域や、乾燥場のスペースがない地域では採用できません。収穫後すぐに乾燥場に運ばれ、スクリーン選別や風力選別、比重選別といった粗選別を行います。この粗選別は、農園によっては行われないことも多いようです。その後、乾燥のために広い場所に広げられて、定期的に熊手などで混ぜられます。収穫ピークの時期は、チェリーを広げるための充分なスペースを確保しなければ、チェリーが厚い層の状態で積まれることになり、品質に悪影響を及ぼします。夜間は濡れたり、湿気を吸ったりしないように積み上げられて、覆いでカバーされます。乾燥期間が長すぎる場合や、均一に乾燥されなければ、発酵や腐敗のリスクがあるため、乾燥の最終段階で、機械(マシンドライ)が使われることもあります。摘みたてのチェリーは70%程度の水分含有量ですが、乾燥されたチェリーは、15~30%まで落ち、処理の最終段階では、最大でも12%程度になります。この伝統的な方式では、定期的に攪拌するためのコストや、天候に左右される問題もありますが、果肉や粘液質に含まれる糖分が、生豆に浸透していき、ボディと甘みに優れた品質になります。

ウォッシュド式

主にコロンビア・グァテマラ・タンザニアなどで行なわれている方法。 水洗式、WASHED(ウォッシュド)、ウォッシュなど、色々な呼ばれ方があります。 ウォッシュドとフリーウォッシュドを分ける考え方もありますが、大まかにウォッシュド式の方法を紹介します。

ウォッシュド式の流れ

水による比重選別

収穫されたチェリーは、まず大きなタンクに流し込まれ、底に沈む重いチェリーと、過熟して乾いたり、腐敗して水面に浮かんでくるチェリーや、枝葉やゴミなどの不純物を選別します。この段階では、まだ完熟チェリーと未成熟チェリーを完全に選別することはできません。果肉除去

果肉除去機(パルパー)の構造には、おろしがね状の表面をしたドラムが回転して、金属面にチェリーを押し付けて果肉をはがすドラムタイプと、歯がついた2枚の隣り合ったディスクの間で圧迫するように果肉をはさむディスクタイプがあります。機械を清潔に保たなければ、以前の処理で残ったままの果実が発酵して、新しい果実に混ざってしまい、腐敗臭や発酵臭を放つ汚染につながります。この工程で、完熟チェリーは果肉を取り除かれて、次の工程に進みます。未成熟な硬い果実は、パルパーで果肉が取れにくいため選別されます。このように、水洗式は最初の段階で完熟チェリーと未成熟、過熟チェリーを選別することができ、精製度を高められるのが利点です。

発酵槽

果肉を除去した後、そのままミューシレージ(粘液質)がついた状態で、発酵槽(ファーメンテーション タンク)といわれる、酵母やバクテリアの働きでミューシレージを分解する、大きな水槽に入れて浸けおきされます。発酵させることによって、ミューレージをはがしやすくします。発酵中、温度が上昇するため、均一な発酵と40℃以下を保つよう頻繁に攪拌されます。発酵は、気候や品種、熟度、量によって異なりますが、6時間から40時間かけて行われます。この発酵工程がきれいな水で行われなかったり、時間をかけすぎたりすると、オフフレーバー(好ましくない匂い)といった、重大な品質低下を引き起こすことになります。発酵工程は、豆が粘液質を失い、表面がざらざらしてきたら、経験に基づいて完了します。この発酵の過程で、酢酸を増加させる酵素反応が起こり、水洗式コーヒーに特徴的な、香り高い酸味、フルーティな酸味が生まれます。水洗

発酵工程が完了すると、すぐに水路に送られ、洗われます。水路の水は常に流され、熟した豆は水路の底にとどまり、フローター(浮遊パーチメント)と呼ばれる欠点豆は、水面に浮かんで流され、取り除かれます。ミューシレージがきれいに洗い落とされて、パーチメントの状態になります。

パルプドナチュラル式

果肉を除去した後、ミューシレージがついた状態のパーチメントを乾燥させる方法です。発酵や腐敗などの注意が必要ですが、ミューシレージに含まれる糖分が浸透して、甘みが生まれます。水による比重選別と、パルパーにかけた段階で完熟チェリーと未成熟チェリーが選別されるため、ナチュラル式よりも精製度が高くなる利点があります。おもに、収穫時に降雨が多く、チェリーを乾燥させるのが難しく、水洗のための大量の水が確保できない地域で採用されています。果肉がついたままのチェリーをまるごと天日で乾燥させるのに10~15日ほどかかるのと比べて、ミューシレージのついたパーチメントを天日乾燥するのは、3日ほどで済むため、ナチュラル式で発生する発酵のリスクを減らすことができます。

この方法を用いているブラジル産地の方々は、よく「パルプドナチュラルで精選したコーヒーはクリーンカップでスウィートになる」と表現しています。

=スマトラ式=

インドネシア スマトラ島の一部にて行なわれている方法。上記3つの方法と大きく違う点は、パーチメントを十分に乾燥させない状態で脱殻し、生豆の状態で乾燥をさせる点です。この工程が、マンデリン独特の深緑色の生豆を生むと言われています。この方法は、気候や社会的な背景から生み出されたのではないかと言われています。

  • メリット スマトラ式特有の個性的な風味を楽しめる。
  • デメリット ウェットパーチメントの状態での時間が長くなるので、 品質劣化につながるリスクがある。